3/4(土)オンライン講演会「データで見る日本社会の女性の現状」開催報告
世界経済フォーラムが発表した2022年のジェンダー・ギャップ指数の日本の総合順位は、146か国中116位。先進国の中では最低レベル、アジア諸国の中では韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果となりました。
このような状況の中、3月4日(土)午後8時~9時半、三代目の内閣府男女共同参画局長としてワークライフバランスの推進等に携わってこられた板東久美子さんに、「データで見る日本社会の女性の現状」と題するオンライン講演会でお話しいただきました。当日は、1980年代、90年代の卒業生を中心に、46名の方が参加なさいました。
【講演の概要】
本講演会の特色は、そのタイトルにもあるように、データを用いて日本社会の女性の現状を活写したことにあります。当日用いられたデータのほとんどは、『令和4年版 男女共同参画白書』からのものです。誰でもアクセス可能な白書ではありますが、実際に手を取ったことのある方は、そんなに多くはないのではないでしょうか。
さて、前述したように、日本のジェンダー・ギャップ指数は116位です。ジェンダー・ギャップ指数は「経済」「政治」「教育」「健康」の4分野で評価します。日本は、「教育」「健康」の分野は高スコアですが、「経済」「政治」の分野は非常に厳しい状況にあります。「経済」は、後述するように女性の就業率自体は上がってはいますが、管理職の割合は低い状況にあります。また、「政治」は、国会、地方議会を問わず、女性議員の割合は非常に低い状況にあります。まとめると、ジェンダー・ギャップ指数が低いのは、日本では、女性の社会参加が進んでいないことにあります。この点を、女性の就労という観点から見ていくと以下のようになります。
まず、女性の就業率自体は上がっていますが、雇用の中身を見ると増えているのは非正規雇用です。確かに、女性の就業率の特徴と言われたM字カーブのMのへこみは、ずいぶんと小さくなってはいますが、問題は女性の労働条件です。
男女の役割分担に対する意識は、特に、若い世代を中心に、ずいぶんと変わってきています。しかし、意識は変わってはいますが、それを実行に移すための社会的素地が整っていないのが現状です。たとえば、男性の長時間労働のために、男性の家事時間は、諸外国と比較すると、韓国とともに、圧倒的に少ないのが現状です。また、男性の育児休業取得率は上がってきてはいるものの、休業の期間は短いと言わざるを得ません。したがって、女性の社会参加を推進するためには、日本社会における働き方自体を変えることが必要です。なお、興味深いのは、介護については、担い手における「嫁」―――被介護者の息子の配偶者―――の割合が減少していることです。これは、高齢化の進展に伴い、夫婦は、それぞれの親を介護しないといけない状況になっていることが原因と考えられます。また、普段、感覚的には感じていますが、女性が世帯主である世帯の所得は、顕著に低いことがデータからも示されています。
以上、日本における女性の地位は、まだまだ低いことは、データからも、明らかになっています。
では、どうすべきなのか。講演会に続く質疑応答においては、その点に発言が集中しました。ただ、「女性の社会進出を進めるには何をすべきか」という問いかけ自体、その問いを受ける参加者の問題意識はさまざまでした。とりわけ、理科系の大学院生の女子学生比率が日本は非常に低いというデータに関連して、東大の女子学生率を増やすという観点からも、どうしたら、理系の女子学生を増やすことができるかということで盛り上がりました。
本講演会は、当初、講師として登壇いただく予定だった林伴子さんが登壇できなくなったために、板東久美子さんが急遽講師を引き受けてくださいました。急なお願いだったにもかかわらず、快く引き受けてくださった板東さんに心よりお礼申し上げますとともに、参加してくださった皆さんにも心よりお礼を申し上げます。