第11回東京大学ホームカミングデイ
2012年10月20日(土曜) ホー ムカミングデイ:
住田裕子さんの講演会を開催しました。
テーマ:「すてきな人生の選び方~行列相談の窓口から」
日 時:2012年10月20日(土) 14:30~16:00 場 所:東京大学本郷キャンパス 赤門総合研究棟2F経済6教室
主 催:さつき会(東京大学女子卒業生同窓会)
講 師:住田 裕子(すみた・ひろこ)氏
<住田 裕子氏 略歴>
昭和26年6月21日、兵庫県加古川市生まれ。東京大学法学部卒業。
昭和54年東京地検検事に任官。
以後、大阪等各地の地検検事として転勤を重ね、昭和62年に女性初の法務省民事局付検事として民法・国際私法等の改正を担当。
平成2年に全省庁女性初の法務大臣秘書官に就任。
その後、司法研修所教官等を経て、平成8年弁護士登録し、さまざまな公職や獨協大学特任教授などを歴任。
現在、NPO長寿安心会の代表として長寿社会の安全安心な社会づくりと東日本大震災の復興支援のために奮闘中。
<参加者の感想>
秋晴れの美しい10月20日、本郷キャンパスで開かれたホームカミングデイ。その中で、さつき会が主催する講演会に出席しました。今年の講演者はテレビの法律相談の番組でご活躍された住田裕子さんです。テーマは「すてきな人生の選び方」。住田さんは東大を卒業後、検事になられ、法務大臣秘書官等を歴任され、テレビでのご活躍もご存じのとおりです。ここまで来られるのに、大変なご苦労があったことでしょう。お話を伺うのがとても楽しみでした。
私たちは学生に戻ったように、大学の大教室でお話を聞きました。これは、ホームカミングデイの醍醐味ですね。大学を卒業すると、なかなか教室に入る機会がないので、とても懐かしく感じました。
さて、壇上に颯爽と登場した住田さんは、普段私たちがうかがい知ることのできないテレビでの裏話や苦労話などを、ユーモアを交えてお話ししてくださいました。
その中で、印象的だったのは、人が人生の坂道を上るのは大変、上ったのを維持するのも大変だが、さらに、それをどうやって下りるかが大事だということです。住田さんは、長い検事としてのご経験や、政治家の秘書官等のご経験から、人が簡単に転落していく姿を数多く見ていらっしゃいます。テレビの世界でもそれを肌でお感じになられたようでした。そして、私が非常に感銘を受けたのは、テレビの出演者が暴力団との関係を取りざたされたときに、周りの人がそれに迎合する発言をする中、住田さんが信念に基づいて発言されたことです。それによって反感を買ったかもしれませんが、検事だったご経験や正義感、庶民としてのバランス感覚といった、住田さんご自身の信念を曲げない姿は、まっすぐな竹のようですてきだなと心から思うのです。
このような、テレビでのご経験から、本題の「すてきな人生の選び方」に話はつながっていきました。「すてきな人生」を選ぶためには、その反対の「すてきではない人生」を知らなければなりません。そこで、住田さんが検事時代に様々な犯罪者と対峙した経験から、多くの犯罪者の特徴を挙げられます。それは、対人関係能力と共感性の欠如ということでした。対人関係能力が欠如していると、人とうまく関わっていけない。共感性が欠如していると、人の痛みを感じられず、ひどいことを平気で行う。これは、普段、私たちが社会生活を営んでいくうえで、大きな壁となるものです。犯罪者にならないため、というよりも、社会でうまく生きていくためにこそ、対人関係能力と共感性というものは必要なのです。
また、さつき会が東大の女子の同窓会という性質を考慮して、住田さんが働くうえで、女性として苦労した点や、当時の状況をお話ししてくださいました。まだ女性は結婚したら仕事を辞めて家庭に入るべしという風潮が強い環境だった中でも、周囲の協力や応援があって仕事を続けられたということです。そして、住田さんが「女性だから」ということを殊更意識したり、悩んだりしなかったのも大きいと感じました。環境や状況に応じて、肩肘張らずに、柔軟に対応していくのがいいかもしれませんね。今後、社会に出ていく女子学生の皆さんには、とても参考になる姿勢だと思います。結局、東大を出ても、女性であっても、大切なのは対人関係能力や共感力、やる気といったものです。それを駆使して社会で生きていくことが大切だと教えられました。
最後に、今回の講演に参加された数名の方からの質問に、時間を延長して答えてくださいました。女性としていやな思いをしたときどのように切り抜けたのか、という質問には、「女性だから、と逃げない」「チャレンジせずに、そういうものだととらえる」と、肩の力を抜くようにというアドバイスをくださいました。また、「一人で悩まないで、周りに聞いてみて。応援する人を二人見つけましょう」ともおっしゃいました。二人という数字は、意外と少なくていいんだという気もするし、本当に応援してくれる人が二人もいるだろうか、という不安も感じます。実際に、住田さんが検事として相手を信頼してよいか迷った時に、応援してくれる人を二人連れてくるように言ったそうです。そのときに本当に二人でも応援する人がいれば、その人を信頼できるという言葉は、ずしっと重みがありました。私も何かに迷った時や悩んだとき、応援してくれる人を二人見つけてみようと思います。
今回の講演では、人は一人では生きていけない社会性のある生き物だということ、社会では対人関係能力や共感性が重要だということを再認識しました。また、住田さんのように流れに逆らわず、しかし、信念を曲げずに生きていく姿勢が大切だと感じました。立場も経験も全く違いますが、先輩の生き様を垣間見て、これからの人生の選び方の参考にしたいと思います。